自宅で転倒したとき、CT検査は必要?――ご家族とスタッフで知っておきたい「安心の基準」

こんにちは、こもれび在宅診療所 院長の大森です。

住み慣れた家で過ごす中で、ふとした拍子に転倒し、頭を打ってしまうことは少なくありません。そのとき、「病院へ行ってCTを撮るべきか、それともこのまま様子を見て大丈夫か」と、ご本人もご家族も、そしてケアに当たる訪問看護師のみなさんも、大きな不安を感じられることでしょう。

今回は、特にご高齢の方の転倒における「頭部CT評価」の考え方について、最新の医学的知見をもとにお話しします。


1. 高齢者の「頭の打ち身」は、見た目以上に慎重に

一般的に、若い方であれば「意識がはっきりしているか」「吐き気がないか」などが判断の目安になります。しかし、ご高齢の方の場合は少し事情が異なります。

加齢により脳にわずかな隙間ができることで、頭の中で出血が起こっても、すぐには症状が出にくいという特徴があります。実は、目立った症状がない方でも、約3%の割合で脳内に損傷が見つかるというデータもあります。いわば「静かなるサイン」を見逃さないことが大切です。

2. CT検査を検討する「3つのポイント」

在宅医療の現場では、私たちは以下のポイントを軸に、病院での精密検査(CT)が必要かどうかを判断しています。

  • お薬の確認(血液サラサラの薬):心臓の病気などで血液を固まりにくくするお薬を飲んでいる方は、軽い衝撃でも出血しやすく、また血が止まりにくい傾向があります。この場合は、症状がなくても早めの検査が推奨されます。
  • 「いつ、どう打ったか」が不明なとき:認知症がある場合や、お一人で過ごされている時に転倒した場合、正確な状況が分かりません。「念のため」の確認が、のちの安心につながります。
  • わずかな変化も見逃さない:意識がぼんやりする、同じことを何度も聞く、手足に力が入りにくいといった症状はもちろん、ご家族から見て「なんとなくいつもと違う」という直感も、非常に重要な判断材料です。

3. 「こもれび」が大切にしていること

私は特定の臓器に限らず、総合診療医として、疾病だけでなく全身を診ることを意識して診療に取り組んでまいりました。

在宅医療では、「医学的な正しさだけを判断基準にしない」ことが重要です。意思決定において、患者さん本人の意向や周囲の状況、何がQOL(生活の質)を規定するのか、など、様々な観点で、複数人で物事をとらえ、話し合いの中で決めることで、納得感のある、患者さん本人の人生に沿った決定につながります。

日本心不全学会 心不全緩和ケアトレーニングコース HEPTスライドより引用

その判断を、科学的根拠(エビデンス)と、長年の臨床経験、そして何より「患者さまとご家族がどう過ごしたいか」という想いを天秤にかけて、誠実に行います。

病院が必要なときは迅速に連携し、ご自宅で過ごすときは24時間365日、私たちがバックアップいたします。


最後に

転倒は誰にでも起こりうることです。「こんなことで呼んでもいいのかしら…」とためらわず、まずは私たちにご相談ください。そのために私たちがいます。

参考文献

  • Expert Panel on Neurological Imaging; Shih RY, Burns J, Ajam AA, Broder JS, Chakraborty S, Kendi AT, Lacy ME, Ledbetter LN, Lee RK, Liebeskind DS, Pollock JM, Prall JA, Ptak T, Raksin PB, Shaines MD, Tsiouris AJ, Utukuri PS, Wang LL, Corey AS. ACR Appropriateness Criteria® Head Trauma: 2021 Update. J Am Coll Radiol. 2021 May;18(5S):S13-S36. doi: 10.1016/j.jacr.2021.01.006. PMID: 33958108.
  • Coulter JS, Randazzo J, Kary EE, Samar H. Falls in Older Adults: Approach and Prevention. Am Fam Physician. 2024 May;109(5):447-456. PMID: 38804759.
  • ‌Depreitere B, Becker C, Ganau M, Gardner RC, Younsi A, Lagares A, Marklund N, Metaxa V, Muehlschlegel S, Newcombe VFJ, Prisco L, van der Jagt M, van der Naalt J. Unique considerations in the assessment and management of traumatic brain injury in older adults. Lancet Neurol. 2025 Feb;24(2):152-165. doi: 10.1016/S1474-4422(24)00454-X. PMID: 39862883.
  • 心不全緩和ケアトレーニングコースHEPT https://hept.jp/
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