訪問診療と「マザーツリー」が育む、新しい地域医療の形
皆さんは、森の木々が地下の菌糸でつながり、養分を送りあっている「マザーツリー(母なる木)」という存在をご存知でしょうか?一本の木が、周りの木々を支え、森全体が豊かになるというのです。これについてはスザンヌ・シマードさんの書いた書籍がありますので、ご興味のある方はぜひお手に取ってみてください。
実は、私たちが目指すこれからの医療も、この「マザーツリー」のような関係性で成り立っています。

医療の垣根を越えた連携「メディカルネイバーフッド」とは
かつての医療は、大きな病院が中心でした。しかし、超高齢社会が進む現代では、病院だけで全てを完結させるのは難しくなっています。そこで提唱されているのが、「Medical neighborhood(メディカルネイバーフッド)」 という考え方です。

これは、かかりつけ医、訪問看護師、薬局、そして介護サービスなどが、まるで近所(ネイバーフッド)のように緊密に連携し、患者さんの生活を多角的に支える仕組みを指します。私は大学院時代、このMedical neighborhoodとICTのあり方について研究を行っていました。
「マザーツリー」としての訪問診療
こもれび在宅診療所は、まさにこの「マザーツリー」を目指しています。
訪問診療医は、ご自宅で療養されている患者様の状態を定期的に把握し、必要に応じて専門病院や訪問看護ステーション、ケアマネジャーと連携します。さらにそのつながりは公的機関に限らず、地域に住む方や行政、NPOなどの団体など、医療や介護の枠組みを超えた連携もまた重要です。
患者様やご家族の声に耳を傾け、適切な支援へとつなげる、いわば医療・介護・地域の「ハブ」 の役割を担っています。
これにより、患者様は住み慣れた家で安心して過ごすことができ、医療や介護サービスは、それぞれの専門性を活かしながら、より効率的にサポートを提供できるようになるのです。
「地域包括ケア」の実現に向けて
訪問診療が中心となって育む「メディカルネイバーフッド」の輪は、やがて「地域包括ケアシステム」という大きな幹へと成長していきます。
「地域包括ケアシステム」とは、医療・介護・住まい・生活支援などが一体となり、その地域で暮らす人々を支える仕組みです。訪問診療所がハブとなり、各専門職が連携を深めることで、このシステムはより強固なものとなっていきます。
まとめ
私たちは、訪問診療を通じて、医療や介護の専門職が手を取り合い、患者様一人ひとりを支える「マザーツリー」のような存在でありたいと考えています。
住み慣れた場所で自分らしく生きる。それを支えるため、私たちはこれからも、地域とのつながりを大切に、温かい医療を提供してまいります。在宅での療養や、訪問診療についてご不明な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
コメント