当院でのサポート事例

当院でのサポート事例

当院でのサポート事例

こもれび在宅診療所では、病気だけではなく、
患者さまの暮らしやご家族の想いにも目を向けながら、在宅での療養を支えています。
ここでは、当院が大切にしている関わり方や、在宅医療のサポート内容についてご紹介します。

【事例1】がん療養中で、病院での治療と並行して在宅医療を開始された方

概要と紹介の経緯 がん拠点病院にて化学療法を受けられていた50代の方。治療の進行に伴い副作用の管理や痛み止めの調整が必要となり、通院への負担が増大したため、病院のがん相談支援センターを通じて当院へご相談をいただきました。

初期の対応と連携 まずは病院のがん外来へ当院の医師が赴き、ご本人・ご家族から直接お話を伺いました。その後、ご自宅での初診を行い、近隣の訪問看護ステーションやケアマネジャーと速やかに連携体制を構築しました。 当初の約1ヶ月間は、化学療法を元の専門病院で行い、日々の症状緩和や疼痛管理をこもれび在宅診療所が担当する「対診」という形で在宅療養を支えました。

病状の変化に応じた方針変更と療養環境の整備 その後、病状の進行に伴って専門病院への通院が困難となり、ご本人のご意向のもと、治療を終了してご自宅での療養に専念される方針へと移行しました。 薬の服用が困難になり、痛みのために十分な睡眠がとれなくなった段階で、速やかにPCAポンプ(患者自己調節鎮痛法)を用いた持続的な疼痛緩和治療へと切り替え、痛みの緩和と睡眠の確保を図りました。 同時に、身体機能の低下に合わせて、介護保険を利用した介護用ベッドや福祉用具の導入、訪問入浴などの生活支援サービスを手配し、ご自宅での療養環境を整えました。

経過と看取りの対応 最期の時期には、ご本人の苦痛を最小限に抑えるため、ご家族の同意のもとで緩和的鎮静を行い、ご家族や大切なペットに囲まれた住み慣れた環境の中で、穏やかに最期を迎えられました。

【事例2】心血管疾患を抱え、ご本人の意向に沿って自宅療養を継続された90代の方

概要と療養開始時の背景 頻脈性心房細動(心臓の脈が速く不規則になる状態)、重症大動脈弁狭窄症(心臓の弁が狭くなり負担がかかる疾患)、下肢のうっ滞性皮膚炎や膿瘍(皮膚の炎症や感染症)など、複数の疾患が重なり、これまでたびたび心不全の増悪(悪化)による入退院を繰り返されていた方。 ご本人はお食事や旅行を好まれ、「入院を避け、最期まで住み慣れた自宅で過ごしたい」という明確なご意向をお持ちでした。

訪問診療における日常的な管理とケア ご自宅での訪問診療では、生活の質(QOL)を維持することを第一に考え、定期的かつ細やかな全身管理を行いました。 具体的には、下肢の膿瘍に対する適切な皮膚処置を継続しながら、心不全の悪化を防ぐため、日々の体重変化や浮腫(むくみ)の程度を厳密に観察。必要に応じてポータブルの心エコー(超音波検査)を用いて心機能を評価し、利尿剤(体内の余分な水分を出す薬)の処量・投与タイミングを微調整することで、体液量のコントロールを徹底しました。

病状進行時の対応と意思決定のサポート(アドバンス・ケア・プランニング) 療養の経過のなかで、大動脈弁狭窄症に伴う消化管出血(いわゆるHeyde症候群が疑われる症状)を来すようになりました。 通常であれば入院や輸血治療が検討される状態でしたが、これまでご本人・ご家族と重ねてきた「今後の療養方針に関する話し合い」のプロセスに基づき、ご本人の「最期まで自宅で」というご意向を最優先に尊重しました。心身に負担のかかる検査入院や輸血処置は行わず、ご自宅で症状緩和を中心としたケアを継続する方針をチームで共有しました。

経過と看取りの対応 その後、病状の進行とともに少しずつ身体機能が低下していきましたが、過度な医療介入を避け、お好みの環境のなかで穏やかな時間を維持できるようサポートいたしました。ご本人とご家族が望まれた通り、最期までご自宅での療養を全うされ、住み慣れた我が家で看取りを迎えられました。

【事例3】施設に入居されている50代の神経難病の方のケース

概要と日常生活動作(ADL)低下への対応 施設にご入居されている50代の神経難病の方の事例です。病状の進行に伴い、少しずつ日常生活動作(ADL)の低下が見られたため、施設スタッフやリハビリ職種と緊密に連携し、その時々の身体機能に合わせた治療およびケアサービスの調整を行いました。

多面的な症状管理とQOL向上のための工夫 療養の過程では、疾患に伴う起立性低血圧(立ち上がった際の血圧低下)に対して細やかな投薬調整を行い、リハビリや日常生活での失神予防に向けた具体的な生活指導を実施しました。 また、お食事が大変好きな方であったため、機能維持を図りながら「お気に入りのフランス料理店へ外出して食事を楽しむ」という目標に向け、医療・介護の双方から安全な外出のための環境調整を行いました。 経過中、誤嚥性肺炎の併発や新型コロナウイルスへの感染が見られた際にも、施設内での速やかな酸素療法や吸引の手配、抗生剤治療など、病状に応じた適切な急性期対応をその都度重ねてまいりました。

見通しの共有と「大切にしたい生き方」に寄り添う相談プロセス 徐々に体力が低下していくなかで、「これからどのように過ごしていきたいか」について、ご本人の心の準備を慎重に見極めながら、病気の見通しや想定される余命についても丁寧にお話を共有していきました。 ご本人が「好きなお菓子を食べたい」「やりたいことを諦めたくない」といった想いを表出され、ご家族もその選択を深く肯定される一方で、医療的なリスク(誤嚥や窒息の可能性など)に対する迷いや葛藤も生じました。当院では、単に医学的な正論を押し付けるのではなく、ご本人が人生において大切にされている価値観を同等に尊重し、多職種とともに常に最善の選択を模索し続けました。

最終段階の対応と施設での看取り 最終的には誤嚥性肺炎の再発を繰り返す状態となりましたが、事前にご本人・ご家族・施設と共有していた方針に基づき、過度な負担となる延命処置は行わず、施設内での緩和ケアへと移行しました。 発熱や呼吸苦などの症状に対して解熱剤や鎮静剤を適切に併用し、苦痛の緩和を最優先に図ることで、ご本人の望まれた環境において、ご家族に見守られながら穏やかに最期を迎えられました。